ノルウェー「フッティルーテン(Hurtigruten)」の思ひで…

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観光・企業の時間です.
今日はノルウェーの会社「フッティルーテン(Hurtigruten)」です.

 

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1893年設立の定期船会社.
ノルウェー西海岸約2400㎞を行き来しており,世界で最も美しい船旅と称されています.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain フッティルーテン(Hurtigruten)

フッティルーテンの船は34の港に立ち寄りながらBergen→Kirkenes→Bergenを約2週間かけて往復しています.

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出所:フッティルーテンホームページ

 

南のベルゲンから北のキルケネスへと北上していくルートが定番ですが,キルケネスからベルゲンへの南向き航海や往復もあります.
クルーズ船としてたくさんの観光客を楽しませていますが,沿岸住民の生活を支える定期船としての需要な役割も担っています.

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住民や貨物が乗降するだけの小さな港にも寄港するのです.1日に2回,毎日来るフッティルーテンは沿岸生活に欠かせない存在です. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain フッティルーテンの歴史

Hurtigruten(フッティルーテン)はノルウェー北部・トロムソに本社を置く船会社です.125年以上の歴史があります.
岩礁やフィヨルドなどの複雑な地形,極夜といった厳しい自然環境を持つノルウェー西海岸.

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沿岸の小さな村々は孤立していました.そんな村々へ船が定期的に訪れるようになったのは1893年のこと.船長Richard Withは蒸気船DS Vestraalenでトロンハイムを出港し67時間後にハンメルフェストに到着しました.このルートがフッティルーテン(早いルート/沿岸急行船)と名付けられたのです.彼の航海が成功する前は,手紙を届けるのに夏は3週間,冬は5ヵ月もかかっていたと言われています.

《ころ》「冬が終わっちゃうね!」
運航ルートは拡大され,1898年には南のベルゲンまで,1908年には北のキルケネスまで伸ばされました.ルートは船にも描かれています♪

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フッティルーテンのルートをより良くするためにつくられた内陸運河もあります.南下するクルーズでは,ロフォーテン諸島(Lofoten Islands)の内陸運河Risøyrennaを通過します.
約2400kmにも及ぶノルウェー西海岸に点在する村々へ人や物資を運ぶフッティルーテン,1936年には毎日運航が開始されています.

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【フッティルーテンミュージアム】
フッティルーテン誕生の町,Stokmarknesにはフッティルーテン博物館(Hurtigrutemuseet)があります.もちろん,フッティルーテンが寄港する港のひとつです.入館料は100クローネですが,乗船者はと50クローネになります(クルーズカードを見せること)!

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模型や写真,映像などでフッティルーテンのこれまでを紹介しています.2018年夏に行ったときはメンテナンス工事が進行中でした.

実際の沿岸船MS Finnmarkenが展示されており,内部を見学できます.カフェや外デッキ,共有スペースなど現在の船と同じ感じの設備です.

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昔の船の部屋.《わん》「意外といい部屋だね.」《ころ》「基本的には今とあまり変わらない!?かも」観光客を乗せる新しい船にはジムやサウナ,ジャグジーなどの設備が完備されたものもありますよ!!

ノルウェーの南北を結ぶフッティルーテンは,沿岸生活には欠かせない存在として活躍し続けています.現在ではノルウェーの西海岸に点在する34の港に,毎日2回(北行きと南行きが1隻ずつ)訪れています.
ノルウェー人の生活を支えるだけではなく,「世界で最も美しい海の旅」として評価されており,観光客を乗せるクルーズ船としても活躍しています.2000年代には北極・南極探検クルーズの運航が開始されるなど,輸送以外の事業でも注目を集めています.船内は,イタリア語,ドイツ語,英語,ロシア語,中国語...と聞き取れる言葉からも様々な国からの観光客が乗っていることが分かります.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain 環境に配慮した運航

フッティルーテンは極地の環境や動物を守るため低エネルギでの運航や,環境汚染物質NOxやCO2の排出削減にも取り組んでいます.

 

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出所:フッティルーテンホームページより

 

船内でごみの下処理を済ませたり,エンジンから出た熱を再利用したりなど船自体も環境に配慮した設計になっているそうです.バラスト水(バランスをとるために貯留・放出する水)の処理設備が搭載された船もあります.さらに電動ハイブリッドクルーズ船を建造中とのこと.海を汚す原因が重油にあるため,液化バイオガス(LBG)とLNGによるクルーズ船への電力供給も試みられています.そのバイオガスは死んだ魚や他の有機廃棄物から作り出します.LNGエンジンにすることで(2015年比で最大)CO2排出量を25%,NOx排出量を90%削減できるそうです.
フッティルーテンはクルーズ業界での再生可能エネルギーの使用を推進しているのです.

使い捨てプラスチックを廃止した世界初のクルーズ会社でもあるそうです.
船内で使うマグカップとマドラー.

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 プラスチック製ではありません!

寄港地で日々届けられる地域の食材(フッティルーテンの料理)にも環境面のメリットがあります.長距離輸送や備蓄期間が必要無くなるため無駄なエネルギーを使うことなく,さらには食品廃棄の削減にも役立っています.

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海洋調査も行っており,ノルウェー沿岸の海水温を80年以上計測しています.長期間にわたるデータは大変貴重なものです.80年前はバケツを使ってサンプル収集をしていましたが,現在ではFerryboxというセンサーシステムを使って水を分析し研究機関へデータを転送しています.《わん》と《ころ》が乗った船Trollfjordには最新レーザー機器Ocean Visualsというシステムが搭載されており,継続的に油流出を監視しています.陸上施設における流出事故の早期発見などに役立っています.

世界で最も環境に優しいクルーズ会社は,スバールバル諸島でホッキョクグマの調査も行っています.スバールバル諸島へ行くツアーではマイクロプラスチックのレクチャーを開催するなど環境への意識を高める活動も行っているのだとか.2015年パリで行われたCOPでは持続的な海運業についてのスピーチもしています.フッティルーテンは,乗客の安全,船員の安全,そして環境も守る会社です. 

 

フッティルーテンの思ひで…

フッティルーテン

ノルウェー西海岸のクルーズ  

クルーズ船の設備

エクスカーション

船内イベント  

フッティルーテンの料理

クルーズの乗下船について

 

  

つぎはどこをお散歩しようかなぁ... 

  


f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain ノルウェー

 

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スカンジナビア半島の西に位置し,スウェーデン,フィンランド,ロシアと国境を接している.西側は長い海岸線となっており多数のフィヨルドがみられる.本土の北に位置するスヴァールバル諸島(Svalbard)もノルウェー領.南北に細長い国土は,北半分くらいが北極圏で,夏と冬で昼夜の長さが大きく異なる.フィヨルドと独特の地形を見せる山々,手つかずの自然,オーロラなど大自然の魅力に惹きつけられた人々が訪れる国.
EU加盟国ではないがEEA(欧州経済領域)に参加しているため,EUの単一市場にアクセスできEU加盟国と自由な交易を行うことができる.シェンゲン協定国でもあるため,エリア内の自由な往来も可能.主産業は石油,天然ガスでイギリスやドイツへ輸出している.天然資源からの収入は政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金グローバル」に積み立てられており,外国企業に投資されている.GDPに占める割合は小さいが水産業も盛んで,養殖サーモンは日本にもたくさん輸出されている.

 

国名 Kingdom of Norway(ノルウェー王国)

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人口 525.8万人
面積 約38.6平方キロメートル
言語 ノルウェー語
通貨 ノルウェ-・クローネ(NOK)
時間 UTC+1(日本時間 -8時間,夏季は -7時間)

 

 

【参考ホームページ・参照文献】

川野祐司(2019)「ヨーロッパ経済の基礎知識2020」文眞堂.
二宮書店編集部(2018)「データブック オブ・ザ・ワールド 2018年版」二宮書店.

 

外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html

Visit Norway:https://www.visitnorway.com/

Hurtigruten:https://global.hurtigruten.com/