【訪問日:2018年8月】
博物館の時間です.
今日はノルウェーの「キルケネス(Kirkenes)」でお散歩です.
ノルウェー北部国境地域の歴史を紹介するミュージアム.South Varangerにあるこの博物館ではborderland historyが主要テーマになっています.ロシアとフィンランドの国境に近い町ならではの歴史,戦時下の出来事,地域の産業を紹介しています.
Grenseland-museet (Borderland Museum)
住所:Førstevannslia, 9900 Kirkenes.
営業時間:毎日9:30-14:00(6月20日から8月は17時まで)
URL:http://www.varangermuseum.no/en/
《わん》と《ころ》はキルケネスから歩いて行きました.ちょっと遠いです.1.5㎞くらいです.
国境の地博物館の近くにはHandelsparkenというバス停がありました.
入場料は大人80クローネでした.美術館,絵の展示とセットになっていました.
ショップではお土産になりそうな品も販売.塩,オイル,石鹸,カップ,オルゴール,アクセサリーなどを販売しており,編み物のパターンを解説した本やサーミのことわざが載った日本語の本もありました.
戦争に関する展示
ロシアの戦闘機Ilyushinが置かれた展示室.
国境に近い町キルケネスは第二次世界大戦で深刻な爆撃が繰り返された町のひとつです.
キルケネスがドイツ軍兵士の拠点だったことも関係しています.苦境にあったソビエトからの絶え間ない攻撃.町には空襲のサイレンが鳴り響き323回も空爆があったのだとか.住居用の建物が空襲により炎に包まれたこともあります.戦争で残った家屋は13軒だったそうです.
爆撃から町の人を守ったのはAndersgrottaという洞窟を利用した地下のシェルター,防空壕です.現在ではちょっとした博物館になっており,ガイドツアーでの見学もできるそうです.
町の歴史
【国境における出来事】
国境の町,ならではの展示を見つけました!!
国と国の間では,いろんなものが行き交っています.
タラバガニがこそっと移動しています!
もちろん人間もです.
こちらは2015年にstorskogへ押し寄せた難民が使った自転車.キルケネスから16㎞ほど離れた国境検問所です.
内戦が続くシリアなどからロシア経由でノルウェーへ入国し難民申請していました.なぜ自転車かというと,検問所を合法的に通る方法が車両に乗っていることだったから.入国後,難民は亡命申請のためにオスロへ連れていかれるので,国境に最も近いキルケネスには真新しい自転車が置き去りにされたのだとか.車両に乗っていれば国境を通過できたのですが,現在では禁止されているそうです.
よりよい福祉制度のあるノルウェーに希望を抱いてやってくる移民・難民.
1939年,フィンランドとソビエトの冬戦争中には1300人以上の難民が川(Pasvik River)をわたってキルケネスに来たこともあるそうです.
【鉱山業の歴史】
鉱業会社Sydvarangerについての紹介です.
1906年にキルケネスで鉄鉱脈が発見され,鉱山会社A/S Sydvaranger(シドヴァランゲル)が設立されました.それまでは少数の家族しか住んでいなかったキルケネスにノルウェーから多くの人々が押し寄せ,人口は8千人に! ノルウェー最大の鉱山における鉄鉱石の露天掘りは,町の発展に貢献しました.
鉱石を大きな機械で粉砕し水を加える技術はシドヴァランゲルが設立されたときに考案されたのだそうです.写真や資料だけではなく,模型や映像での展示もありました.
《わん》「鉱石をハンドボール大に砕くことができたAndersという粉砕機は当時では珍しい機械だったんだって!」
採掘した原料を運ぶために1910年には鉱山とキルケネス港を結ぶキルケネス=ビェルネヴァトン線が開通しました.ドイツ,スウェーデン,ノルウェーの民間資本が投入されています.
約100年間で200Mt以上の鉱石が採掘された鉱山は,鉄鋼市場の落ち込みを受け1997年に閉鎖されました.2008年,Sydvarangerの親会社Northern Iron Ltdによって鉱山や鉄道,施設などが改装されています.不純物の少ない鉱石やマグネタイトがヨーロッパや中東,中国へ販売されていたそうです.その時は,アルセロール・ミッタルやタタ・スチールなどと取引関係にありました.設備投資も行われ低コストでの稼働を実現していましたが,2015年の急激な市場の悪化により鉱山は閉鎖されました.その後オスロの投資会社Tschudi Groupが鉱山のプロジェクトを買収しています.操業再開に備えて設備の維持管理が行われているそうです.
《ころ》「あそこが鉱山だったのかな!?」
今でもキルケネスに残っている景色です.
【文化の紹介】
サーミの文化に関する展示やキルケネスの昔の暮らしを紹介した展示コーナーもありました.
写真も展示されています.
「おしりが寒そうだねぇ.」
美術作品の展示
サーミ人アーティストJohn Savio(1902-1938)によるサーミの人々の生活を題材にした絵画も展示されています.
他にもKaare Espolin Johnson(1907-1994)によるグラフィックアート作品も展示されています.
つぎはどこをお散歩しようかなぁ...
ノルウェー
スカンジナビア半島の西に位置し,スウェーデン,フィンランド,ロシアと国境を接している.西側は長い海岸線となっており多数のフィヨルドがみられる.本土の北に位置するスヴァールバル諸島(Svalbard)もノルウェー領.南北に細長い国土は,北半分くらいが北極圏で,夏と冬で昼夜の長さが大きく異なる.フィヨルドと独特の地形を見せる山々,手つかずの自然,オーロラなど大自然の魅力に惹きつけられた人々が訪れる国.
EU加盟国ではないがEEA(欧州経済領域)に参加しているため,EUの単一市場にアクセスできEU加盟国と自由な交易を行うことができる.シェンゲン協定国でもあるため,エリア内の自由な往来も可能.主産業は石油,天然ガスでイギリスやドイツへ輸出している.天然資源からの収入は政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金グローバル」に積み立てられており,外国企業に投資されている.GDPに占める割合は小さいが水産業も盛んで,養殖サーモンは日本にもたくさん輸出されている.
国名 | Kingdom of Norway(ノルウェー王国) | |
人口 | 525.8万人 | |
面積 | 約38.6平方キロメートル | |
言語 | ノルウェー語 | |
通貨 | ノルウェ-・クローネ(NOK) | |
時間 | UTC+1(日本時間 -8時間,夏季は -7時間) |
川野祐司(2018)「ヨーロッパ経済とユーロ 補訂版」文眞堂.
二宮書店編集部(2018)「データブック オブ・ザ・ワールド 2018年版」二宮書店.
外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html
Visit Norway:https://www.visitnorway.com/
Visit Kirkenes:http://www.visitkirkenes.no/
Kirkenes:https://www.visitkirkenes.info/
Cruise Norway:https://www.cruise-norway.no/