スウェーデン 「エーランド島の世界遺産たち」の思ひで…

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain 【訪問日:2016年8月】

 
観光の時間です.
今日はスウェーデンの「エーランド島(Öland)」でお散歩です.

 

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今日は世界遺産に登録されている南部の農村風景「Agricultural Landscape of Southen Öland」を紹介します.
エーランド島南部の農業景観は2000年にユネスコ世界遺産に登録されています.“エーランド島南部”の具体的なエリアは,島の西側Karleviから東側Gårdbyを結んだ線より南側です.なので,前回紹介したOttenbyはユネスコ世界遺産の一部ということです.詳しくはEXCURSIONS ON SOUTHERN ÖLANDをご覧ください.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain The Great Alvar

 

エーランド島南部に260平方キロメートルにわたって広がる不毛の平原.この場所はAlvaretと呼ばれており,石灰岩質の岩盤の上にわずかに土がある程度です.中でも大規模な場所はGreat Alvar(Stora Alvaret)と呼ばれています.

 

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石灰岩に覆われた不毛の地(barren alvar plains)と表現されますが,植物が全く育たないわけでもなく,石灰岩の上にある薄い土壌に牧草などが生えています.木が根を張ることのできない大地ですが,家畜の牧草はあったということです.それだけではなく,セダムやアンティリス・ブルネラリアといった植物やエーランド島固有種のHelinthemum oelandicum(エーランド岩花? 日本語名は何でしょうか?)やSiberian wormwood(シコタンヨモギ)も生息しています.

 

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特殊な植生がみられる要因はペーハー(pH)レベルが高いからだそうです.この生態系の多様さも世界遺産に選ばれた理由のひとつです.植物の多くは5月から6月に開花するため,その頃は島全体が美しく彩られるのだとか.初夏は観光客にも人気の時期のです.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain möckelmossen

 

Alvaretには季節性の湿地や池もあります.möckelmossenはAlby村の北西にあります.ここはかつて潟だった場所なのだそうです.
ResmoとStenåsaの間を走る道沿いにあります.

 

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写真左側が駐車スペースです.ここに車を止め,歩きます.黄色い花の咲く道を…10分くらい歩きます.土や岩の道ですが,歩きやすかったです.

 

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エーランド島南部の独特の地質,石灰岩質の平原と,小さな黄色い花を見ることができました.
「あ!! 池がある.」正しくは池ではなく石灰岩の湖『möckelmossen』です.Alvaretで最も大きな湖と言われています.

 

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小さく浅い湖のように感じますが...たぶん夏だからです.水量は季節によって大きく変化するそうです.水量の多い秋には鳥たちの休む場所にもなっているのだとか. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain 南部の農地(agricultural landscape)

 

土地は用途に応じて2つに分けられ,村に近いinfieldsは耕作地や牧草地として使われました.一方,石灰岩がむき出しだった土壌や沿岸地帯のoutfields(outlying)は放牧に利用されました.19世紀の農業の近代化にともない,こういった土地利用の区別は(本島やヨーロッパ各地で)なくなり,町から離れた地区は木材の生産地として利用されるようになりました.しかし,エーランド島では特有の地質のため木材の生産地への転用はできず,古くから続く区別した土地の利用が続きました.

 

今でも何世代にもわたり耕されている土地を耕作し,何世紀も放牧されてきた土地で家畜は草を食べています.これがエーランド独自の農村風景なのです.農地を耕す機械などは,もちろん近代的なものが導入されています.

 

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Mörbylånga plainと呼ばれる耕地は肥沃な土地では,サトウダイコンや玉ねぎ,イチゴ,ジャガイモなどが栽培されています.ほかの部分では家畜用の飼料が作られているそうです.
136号線,Bredinge近くでは,

 

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山積みになった干し草を見ました. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain 南部の村(Line villages)

 

Alvaretには道路に沿っていくつもの線状集落(linear village)が点在しています.Bredingeという村の看板の下にRadbyという看板があります.

 

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Radbyは翻訳するとlinear villageと出てきました.
13世紀ごろの法律によって形成された村の形で,村の通りに沿って農家が並ぶ形になっています.線状集落は耕作地と放牧地の間に位置しているそうです.
集落の農地は四方を囲み住宅と農舎をフェンスや壁で分けていました.このような農場は Geatish(götisk)と呼ばれています.また農作物へ動物が近づかないように耕地は囲まれていた所はgärdenと言うそうです.囲いは放牧を行っていた沿岸部にまで広がっており,かつての囲いは,現在でも見ることができます.

 

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f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Gettlinge burial field

 

136号線沿いGettlingeという町の近くでは,ちょっと変わった景色を見ることができます.

 

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草原の上に置かれた石.これらはお墓です.
Gettlingeよりも北にあるKlintaから約2㎞にわたってみることができます.中にはship tumulus(stone ship)と言われるものもあり,背の高い石灰岩を囲うような形で石が配置されているところもあります.このストーンサークルはエーランド島の典型的な遺跡なのだそうです.これらの石が置かれた埋葬場は後期鉄器時代のものだと考えられています. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Ölands windmills

 

エーランド島の風景に欠かせないものが風車.南部だけではなく,エーランド島北部でも見かけました.エーランド島のシンボルでもある風車は,農作業に使われていたそうです.島内に残る350ほどの風車は,文化財に指定されておりスウェーデン国家が保護保存しているそうです.

 

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風車の多くは19世紀に建てられたものだそうです.stubbkvarnenという風車は全体が回転する仕組みの風車で,このタイプがたくさんあります.
島には風車がいくつも残っていて,道路沿いにたくさん見かけましたが,どれも動いていませんでした.木造の風車は近くで見学するのは難しいと思います.多くは石垣の向こう側,人の家の敷地内にありました.


エーランド島はのどかで静かな島.お散歩したのが8月下旬だったせいもあると思いますが観光客も少なくて,とても良い場所です.観光スポット(施設)のエントランスには石鹸や料理用オイル,ハチミツ,木製のバターナイフとかを売っています.あ,あと(世界一まずいお菓子といわれる)ラクリス味のおいしくなさそうなキャンディも.
町や灯台には,その場所ならではのお土産もありました.
エーランド島へはカルマルからバスで来ることもできますが,レンタカーを借りて観光するのがおすすめです. 自転車もおススメとのガイドがありますが,エーランド島は広いので自信のある人向けです.

 

つぎはどこをお散歩しようかなぁ... 

  


 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain スウェーデン

 

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スカンジナビア半島の東側に位置するスウェーデン.北西部のノルウェーとの国境にはスカンジナビア山脈があります.国内には約9万もの湖沼が存在し,またストックホルム群島(Stockholms skärgård)には2万4千もの島々が点在するなど独特の地形を有しています.

国土は南北に細長く,国土の約14%は北極圏に位置し,夏至前後の1-2ヵ月は太陽が沈みません.北部の冬は7ヵ月にも及びます.一方,南部は北大西洋海流の影響を受けるため高緯度にもかかわらず比較的温和な気候です.人口の90%は南半分に居住しています.
1995年にEUへ加盟しましたが,通貨統合への参加は見合わせており,ユーロは導入していません.スウェーデンの中央銀行リクスバンク(Sveriges Riksbank)は,1668年に誕生した最古の中央銀行として知られています.

 

国名 Kingdom of Sweden(スウェーデン王国)

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人口 968万人
面積 約45万平方キロメートル
言語 スウェーデン語
通貨 スウェーデン・クローナ(SEK)
時間 UTC+1(日本時間 -8時間,夏季は -7時間)

 

 

【参考ホームページ・参照文献】

二宮書店編集部(2016)「データブック オブ・ザ・ワールド 2016年版」二宮書店. 

外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html

新世紀シリーズ「スウェーデン」(ISBN 88-476-1805-3),Casa Editrice Bonechi.

在日スウェーデン大使館公認 観光情報サイト:http://letsgo-sweden.com/

guidebook sweden:http://www.guidebook-sweden.com/en

visitsweden:http://www.visitsweden.com/sweden/

Öland:https://www.oland.se/en


「The World Heritage The Agricultural Landscape of Southern Öland」

FACT SHEET,Utgivet 2009-04-27,County Administrative Board Kalmar.