【訪問日:2019年8月】
観光の時間です.
今日はオランダの「Alkmaar(アルクマール)」でお散歩です.
世界的に有名なアルクマールのチーズマーケット(Kaasmarkt).チーズ博物館の隣の広場Waagpleinで行われています.
3月末から9月末の金曜朝(10時から13時)に行われていますが,7-8月はナイトチーズマーケット(Evening cheese market)もあり火曜(19時から21時)に開催されています.
チーズマーケットに関する情報はこちら
今回は夜に開催されるチーズマーケットを見学しました.
チーズマーケット
イブニングチーズマーケットは19時からとなっていますが,3時間くらい前から準備は始まっています.
17時にはチーズが並び始めていました.大きなトラックから,大きなチーズが運び出され広場に並べられていきます.
並んでいるのは,ゴーダチーズとエダムチーズ.Campina and Conoの工場から運ばれてきます.
《わん》「朝のチーズマーケットには2400個ものチーズが並ぶんだって!」
《ころ》「夜のマーケットも同じような規模なのかな!?」
チーズを並べているとき,計測所内では,チーズ運搬人の長“cheese father”が運搬人を集めその日の確認が行われているのだとか.
運河沿いにはチーズ関連の露店が出ています.
いろんな種類のチーズが並ぶ店やチーズ用の木製カッティングボードを販売する店などです.チーズトーストを焼いているお店も♪
チーズトーストは3ユーロ,野菜入りは5ユーロでした.
チーズフォンデュもあったけれど,とても暑い日だったのでやめました.その代わりに搾りたてのオレンジジュースと一緒にいただきます!!
トロっとしたチーズは程よい塩気で美味しかったです.
全てのチーズが並んだころ,開始の合図Cheese bellが鳴り響き,運搬・取引が始まります.
始まるころにはチーズマーケットを囲むようにたくさんのお客さんが集まります.「前の方で見たい人は早めに行って...」と紹介している本もありますが,お客さんはずっと同じ場所で見ていないし,同じような動作(チーズを投げる・運ぶなどのパフォーマンス)が何度も行われるので,順番に見ることができると思います.それに,大きなスクリーンも設置されています.
《ころ》「あ!あそこにビデオカメラがあるよ.」
お姉さんたちは,観光客にチーズを販売.
木靴をはいたお姉さんたちが販売するチーズバッグは一袋,10ユーロ.ビニールバッグのチーズセットもありました.
市場に並んだチーズは品質を評価されます.その方法は...試食!
「チーズくださいな♪」試食をもらえることもあります.
食べてみるだけではなく,チーズの穴(eyes)の数や密度,香りや(叩いた時の)音など様々な評価基準があります.チーズの品質を確かめてから価格交渉へと進みます.
価格交渉は互いの手をたたき,価格を言うことで行われるそうです.
価格・取引が決まるとWaagへ運ばれ計測されます.
建物内に運ばれたチーズは重さを計測.
計測している人はtasman(bagman)と呼ばれる人たち.
腰にお金を入れるバッグをもっていることから,こう呼ばれるようになったそうです.
バイヤーに正しい量が渡るようにwaagmeester(検量人)の監視のもと,正確に重さを計測しされ,印が付けられます.
計測を終えたチーズは購入者のトラックへ運び込まれます.チーズを運んでいるのはkaasdrager(チーズの運搬人)と呼ばれる人たち.
《ころ》「8個のゴーダチーズが乗っている」
各チーズの重さは13.5㎏! チーズを運ぶ木のカートの重さは25㎏近くあります.つまり...133㎏の重さになります.
重たいチーズを一度に運ぶのはとても難しく,バランスを保つために独特のリズムがあるそうです.
チーズを投げて運ぶこともあります.その作業をしているのはingooierと言われる人たち.
《ころ》「重そうだけど,どんどん投げているよ」
《わん》「フリスビーみたいだね♪」
彼らによってカートに積み入れられたチーズは,トラックへと運ばれます.
アルクマールのチーズマーケットの歴史
中世の頃にはすでに外国に輸出されていたオランダのチーズ.チーズの取引はオランダ人の生活を支えるものでした.ゴーダ,エダム,アルクマールといった町は,「ワーフ」と呼ばれる計量所を建設し,チーズ取引の中心地として栄えました.
それらの町では現在でも中世のチーズ取引きの様子を再現した「チーズマーケット」が行われています.
ゴーダやエダムと同様に,アルクマールのチーズマーケットはオランダ最大・最古のチーズマーケットです.1365年にはチーズの計量が行われていたという記録が残っています.最初のころは重さを計る天秤(cheese scale)が1セットしかなかったためチーズの取り引きはワーフ広場で一度に行われました.次第にチーズ取引は拡大していき,最盛期(18世紀から19世紀)には週に4回以上のチーズ市が夜中まで開催されていたそうです.
広場は数回にわたり拡張され,初期のころと比較し8倍もの大きさになっているそうです.
アルクマールにとってチーズの取引はとても重要なものでした.
1593年にはチーズ運搬人の組合(=ギルド)『kaasdragersgilde』も結成されています.メンバーの権利や利益を守る組織です.ギルドに所属していないと仕事をすることはできませんでした.30人ほどいた運搬人は4つのグループ(vemen)に分けられ,それぞれがcheese scaleを持っていたそうです.
チーズ運搬人がかぶっている帽子の色に注目してください!
赤・黄・緑・青と様々な色の帽子があります.この色はグループごとに決まっているそうです.
《ころ》「グループに分かれて競争しているみたいだね!!」
中世のころのチーズマーケットでは,3つのグループが仕事をし,1つは予備として備えていたそうです.
アルクマールの街を歩いていると...チーズが町にとってとても大切なものであることがよく分かります.チーズ,ネズミ,そしてネコ.
このチーズの矢印(?)はチーズ博物館への道しるべです.探してみてくださいね”
アルクマールはクリスマスツリーもチーズで飾られるようです.
アルクマールチーズ市に並ぶチーズ
アルクマールチーズ市に並ぶチーズは,ゴーダチーズとエダムチーズ.ConoとFrieslandCampinaの工場から運ばれてきます.
1906年には北ホランドには100以上のチーズ生産工場がありましたが,現在はConoとFrieslandCampinaの2つの大規模工場に集約されています.(オランダには約21のチーズ工場があり,年間1億キロのチーズを生産している大規模工場もあるそうです.)
【CONO Cheesemakers】
チーズBeemstercheeseを生産するCONO(https://www.cono.nl/en).
CONO Cheesemakersは1901年,オランダ北部の酪農家たちが創設した協同組合.複数の農家が一緒になることで,バターやチーズなどの賞味期限の長い製品を作ることができるようになりました.2001年には創設100周年を記念して王室御用達のチーズメーカーになっています.
オランダの干拓地Beemster polder.粘土質でミネラルや栄養素が豊富な草が育つため牛の放牧に最適な場所.ここで100年続く地元農家の伝統製法やチーズ職人の技を守りながら,専門知識や最新技術を用いてBeemster cheese(https://beemstercheese.us/)を生産.手作業で攪拌したり自然熟成させたりと手間と時間をかけながらのチーズ生産が続いています.
CONOの酪農家たちは年間3億5000万㎏の牛乳を生産し,2800万㎏のチーズを加工しています.それらのチーズは様々なブランド名で25ヵ国に販売されているそうです.
CONOは比較的小さな協同組合だそうで,460の酪農家がいます.協同組合が持続可能な経営を重視しており,利益を品質改善や新製品のために投資しています.CONOのプログラム‘Happy Cows, HappyFarmers and Happy Earth’では,牛からチーズ,生産者,さらには地球環境までの生産チェーン全体の持続可能性を高めることを目標としています.利益の公正な分配やエネルギーの再利用に取り組んでいます.また,家族のように大切にされているCONOの牛たち.無農薬の牧草地で放牧されている健康な乳牛は,特別なチーズを作るためのクリーミーな牛乳を提供してくれるそうです♪
参考URL
DUTCH INDUSTRY:https://readymag.com/c2i/621845/4/
【Koninklijke FrieslandCampina】
大手酪農会社Friesland FoodsとCampinaの合併により誕生した,世界最大級の酪農共同組合(https://www.frieslandcampina.com/en/).2018年の売上高は115億5300万ユーロで,世界34ヵ国にオフィスがあり,製品は100ヵ国以上に輸出されています.
FrieslandCampinaは牛乳・ヨーグルト・チーズなど様々な消費者向けの乳製品ブランドが数多くもち,世界中のスーパーマーケットなどで販売しています.オランダ,ベルギーで有名なブランドCampina,アジアで有名なDutch Lady,世界展開しているFrisoというブランドもあります.
また,レストランやケータリングなどフードサービス向けのブランドもあります.
140年以上の歴史があるFrieslandCampinaは,その技術をアジアやアフリカでの酪農開発にも役立てています.Dairy Development Programmeを通じて,ベトナム,マレーシア,ルーマニア,ナイジェリア,パキスタンなどの小規模酪農家を支援することで牛乳の品質や1頭当たりの生産量の向上,市場へのアクセス改善などを実現しています.
このような大規模工場の見学はできませんが,伝統的な製法でチーズを生産している農場があり,訪問・体験できるチーズファームはあります.
つぎはどこをお散歩しようかなぁ...
オランダ
西ヨーロッパに位置し北海に面する国.ドイツやベルギーと国境を接している.
国土の約26%が海面下の標高で,最高地点は323mという平坦な土地を持つオランダは,ダムや堤防の建設といった水利事業が古くから行われてきた.風車や水車も土地の干拓のために建てられ,国土を水から守ってきた.限られた土地を有効活用するため,また気候変動による海面上昇への対策として,水上での酪農と製品生産が行われている.主要港湾都市ロッテルダムの港には世界初と言われる水上酪農施設(Floating Farm)が開業(2019年6月).このように農業・酪農分野における技術革新が続いている国で,ICTを取り入れた先進的なシステム・搾乳ロボットなどを開発するLELY(レリー)社が有名.農産物の輸出はアメリカに次ぐ世界第2位で,園芸(花)の輸出大国としても知られている.アールスメール花市場は有名.
EC(欧州共同体)原加盟国.1992年,EU(欧州連合)の創設を定めた条約が採択されたのはオランダ南部の都市マーストリヒト.
国名 | Kingdom of the Netherlands(オランダ王国) | |
人口 | 1,718万人 | |
面積 | 約41,9万平方キロメートル | |
言語 | オランダ語,フリース語(フリースランド州) | |
通貨 | ユーロ(EUR) | |
時間 | UTC+1(日本時間 -8時間,夏季は -7時間) |
川野祐司(2019)「ヨーロッパ経済の基礎知識2020」文眞堂.
visitalkmaar:https://www.visitalkmaar.com/en
Visit the Alkmaar:https://www.kaasmarkt.nl/en