スウェーデン,デンマーク 「オーレスン橋」の思ひで…

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道路の時間です.
今日はスウェーデンとデンマークでお散歩です.

 

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コペンハーゲン(Copenhagen)とマルメ(Malmö)をつなぐオーレスン橋.デンマーク語ではØresundsbroen,スウェーデン語ではÖresundsbronと表記します.公式にはデンマーク語とスウェーデン語を合わせたØresundsbron(オーレスンブロン) という表記が使われています.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Øresundsbron

 

2000年7月に開通式が行われ,自動車や鉄道でデンマークとスウェーデンを行き来できるようになりました.

 

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長い間エーレ海峡(Øresund)は交通や輸送において厄介な場所でした.20世紀初めごろから計画はあったものの経済的,政治的要因により橋の建設はなかなか始まりませんでした.グローバリゼーションが進んだ20世紀後半,ヨーロッパ大陸とスカンジナビア半島をつなぐという新たなビジョンが生まれました.さらに技術的問題も乗り越えたことで,1991年に両国はオアスン海峡連絡路の建設に合意しました.翌年,設計や建設,運営などを行うØresundsbro Konsortietという事業主体が設立されました.


橋ができるまでは海峡を越える交通手段は船しかなく,高速の船でも45分かかっていたそうです.現在では列車で35分,しかも10分から20分おきと頻繁に運行されているのだとか.
とはいえ,スウェーデンのスコーネ地域はかつてデンマークの領土であり両国は激しく争っていたという背景を考えると,橋の完成は両国が共に発展していくという象徴的意味が強く感じられるものとなっています.
《ころ》「“橋”は交流やコミュニケーションを象徴する存在なんだね」
《わん》「ユーロのお札には裏面に(架空の)橋がデザインされているもんね” スウェーデンもデンマークもユーロ参加国ではないけれど...」
橋にかかわる仕事をしている人はデンマーク語,スウェーデン語の両方を業務用語として使っているのだとか.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain 自動車から見たオーレスン橋

 

オーレスン橋は全長16.4㎞.デンマーク側から埋没トンネル(約4㎞),人工島(約4㎞),橋梁(約8㎞)という作りになっています.日本でいうアクアラインのような橋です.でも海ほたるのようなサービスエリアはありません”

こちらがデンマークからスウェーデンのマルメへ向かい際に通るトンネルの入り口です.道路は欧州自動車道路E20号線です.

 

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 海峡中央付近に造られた人工島「Peberholm」部分は海底トンネルとなっています. 

 

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この写真は2012年にお散歩したときに飛行機の窓から撮影したものです.コペンハーゲン空港の近くの上空からはオーレスン橋や風力発電の風車が見えました.
《ころ》「この写真を撮った時は,道路が海の中に消えているから不思議に思っていたんだ.海底トンネルになっていたんだね!!」

 

Peberholmはトンネル部分と橋部分の分岐点となっています.人工島が“Peber(コショウ)”の島と名付けられたのは,近くにある島「Saltholm(Salt Islet)」塩の小島があるからなのだとか.島の環境を保護するため自然の島であるSaltholmを使う計画は破棄されました.トンネル部分が作られたのは,高さ制約といったコペンハーゲン国際空港(Københavns Lufthavn,Kastrup)の制約を守るためです.また大型船が航行できるようにという理由もあるそうです.

橋が見えてきたよ♪ 

 

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橋の手前で,スウェーデン領となったことが分かります. 

 

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オーレスン橋はスウェーデン国内で最も長い橋です.

橋の部分(橋梁部分)は列車と自動車が通行できる併用橋として世界最大なのだとか(鹿島建設「建設博物語,橋の歴史物語,第9章」).
斜張橋(cable-stayed bridge)の主径間は490mです.斜張橋とは「塔と桁とを斜めに張ったケーブルでつないで桁を支える構造の橋」とのこと(日本橋梁建設協会より).

 

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この写真を見ればよく分かると思います.

 

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《ころ》「電車はどこを走っているの!??」
道路は4車線,運転をしていても線路は見えません.
《わん》「鉄道が通っているのは道路の下なんだって」
鉄道と道路が上下に分離して敷設されている日本の瀬戸大橋と姉妹橋になっているそうです.


【toll station】
料金所はスウェーデン側に設置されています.

 

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11車線は色分けされており有人のレーンやクレジットカード受付レーンもあります(参考:2016年現在受け付けているカード).

緑のレーンはBizzes(オーレスン橋の定期券(BroPas)購入者が使うレーン.BizzというのはETCのようなものです.)
青のレーンはクレジットカードでの支払い(セルフサービス)
黄のレーンは現金での支払い(有人レーン) 

 

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普通自動車の通行料は片道48ユーロ(EUR).ミニバスなどの大き目の車は96ユーロ,バイクは26ユーロです.金額はユーロ表示ですが,デンマーククローネ(DKK)やスウェーデンクローナ(SEK)でも支払うことができます.また,BroPasという年間定期券で割引を受けることもでき,40ユーロで購入すれば,1回22ユーロで渡れます(自動車ナンバーが必要なのでレンタカーでは利用できません).

iTICKET(electronic ticket)を使えば契約価格で橋を通行することができます.レンタカーを借りる場合は,レンタカー会社が契約していることがあるので,借りる時に聞いてみましょう.
今回はA4の紙に印刷されたチケットをくれました.レンタカー会社はSixtです.こちらから橋を渡る予定があることを話さないと,iTICKETはもらえません!
レンタカーの最初の手続き時に,スウェーデンへ行く予定があることを伝えました.(デンマーク国内の橋Great Belt(Storebælt)も有料の橋です.こちらも割引チケットをもらえる可能性があるので,レンタカーを借りるときに聞いてみましょう).橋の通行料金はレンタカー会社に支払う形になります.

 

こちらがSixtの受付で渡された紙です.「Blue Lane」に行くことと教えてくれます.「1」と書かれているのは行きに使うチケットだからです. 

 

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toll stationでは青レーンに進みます.料金所では,印刷されているQRコードを機械にかざします.ゲートでは(紙の)チケットのコードをしっかり押し付けてください. 

 

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iTICKETは1コード1回のみ有効.つまり,コペンハーゲンでレンタカーを借り,スウェーデンへ行き戻ってくる場合は,橋を2回わたるので,iTICKETが2枚必要になります.iTICKETの用紙はスキャンするだけで回収されません.行き/帰りで同じものを使わないようにしましょう.

2016年夏にお散歩したときは,ゲート通過の後にパスポートチェックがありました.両国ともシェンゲン協定エリアなのでスタンプはありません.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain オーレスン橋の利用状況

 

 オーレスン橋は10分に1台の間隔で車が橋を通過していると言われています.
通行量統計を見ると

 

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(データはOresundsbronTraffic Statsより.)

 

開通から5年で交通量が74%も増えたとのこと.2008年以降は多少落ち込む年もあったものの,毎年700万台で推移しています.大型トラック(Lorries)や長距離バス(Coaches)も橋を渡っていますが,往来する車は自動車が多いのですね.

車での交通量が増加後に安定しているとはいえ,オーレスン橋経由での行き来の2/3は列車によるものだそうです.コペンハーゲンとマルメを35分程度で結んでいるのだから,利用する人が多いのでしょう.

 

エーレ海峡の行き来が簡単になったことで,互いの地で働く人も増えたそうです.370万人の規模を誇る新たな地域(Øresund Region)が生まれたことで,教育,文化やスポーツ面での発展だけでなく,ビジネス面でも発展が見込まれ企業を引き付けているようです.

 

2016年夏にお散歩した時はこんな光景が見られました. 

 

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コペンハーゲン空港駅でのパスポートチェックです.難民問題に対処するための一時的な措置です.コペンハーゲン空港からスウェーデン方面へ電車で行くときは,パスポートが必要です.

 

つぎはどこをお散歩しようかなぁ... 

  


 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain オーレスン橋

 

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【参考ホームページ・参照文献】

建設コンサルタンツ協会誌(Vol.246)『一大経済圏を誕生させた「オアスン海峡連絡路」』 

新世紀シリーズ「スウェーデン」(ISBN 88-476-1805-3),Casa Editrice Bonechi.

在日スウェーデン大使館公認 観光情報サイト:http://letsgo-sweden.com/

guidebook sweden:http://www.guidebook-sweden.com/en

Øresundsbron:https://www.oresundsbron.com/en/start

Road Traffic Technology:http://www.roadtraffic-technology.com/