【訪問日:2013年8月】
観光の時間です.
今日はスロベニアの「Postojna(ポストイナ)」でお散歩です.
《りん》からのメールは「スロベニアの有名な鍾乳洞に行ってきてね」でした.スロベニアは鍾乳洞だらけなんですけど・・・と思いながらも,《わん》は車を運転してポストイナを目指します.
スロベニアの南西に位置するノトランスカ(Notranjska)地方には地下河川や鍾乳洞が存在します.この地域は滝や渓流,湖の美しさが人気ですが,やはり石灰石が浸食して出来た鍾乳洞が一番人気の観光スポットとなっているようです.
今日は,地下の世界をお散歩します♪
スロベニアのカルスト
カルスト地形とは石灰岩など水に溶けやすい岩石で構成された大地が,溶食されてできた地形のことです.鍾乳洞や地下河川の存在がカルスト地形の特徴です.
ピウカ川が流れ込んでいるポストイナ鍾乳洞は,ヨーロッパ最大の大きさを誇ります.スロベニアを代表する観光地であり,毎年50万人近くが訪れるそうです.
古くから観光客が訪れる地であり,鍾乳洞には13世紀頃に訪れた人のサインが残っているそうです.また,1819年には104人の観光客が来たとの記録も残っています.当時の初めての見学者はオーストリア皇太子フェルディナントなのだとか.鍾乳洞の美しさは人々を惹きつけ,1874年にはポストイナで最初のホテルがオープンしています.本格的に観光化が進んだのは第二次世界大戦後です.
ポストイナへの道
ポストイナ鍾乳洞は人気観光スポットではありますが,ポストイナの町を拠点にしたスロベニア観光はお勧めできません.ポストイナの町はホテルなどが集まる大観光都市ではないからです.
そうは言ってもポストイナはノトランスカ地域最大の町.1929年にはこの町に国立洞窟学研究所が設立され国内外のカルスト研究が行われるようになりました.国土の43%がカルスト地形と言われるスロベニアには南部にディナル・カルストがあります.この地域の呼び名『カルスト』は研究者や訪れた旅行者によって伝えられ,国際的に用いられている学術用語のカルストになりました.私たちもカルスト台地のように使いますね.
ポストイナはリュブリャナといった都市から日帰りで訪れる観光地です.リュブリャナからは高速道路A1(E70)で50分程度です.高速バスもリュブリャナのバスセンターから出ています.
高速道路には目立つ大きな看板があります.さらに,ポストイナに近づくと観光地を示す茶色い看板も出ています.
ぼやけてしまっている写真ですが,「ポストイナ鍾乳洞は6km先を右折,洞窟城は16km先を右折」という意味の看板で得す.
高速道路は『Postojna』の出口で降ります.
ビグネットを貼った乗用車は黄色い看板のゲートから出ましょう”
ポストイナ鍾乳洞はポストイナ中心部から1kmほど離れています.高速道路を降りてからも,ポストイナ鍾乳洞への案内看板が出ているので,分かりやすかったです.
ポストイナ鍾乳洞に到着です.駐車場に車を止めたらチケットを買いに行きます♪ スロベニア語のJAMAは英語のCAVEと同じ意味です.
ポストイナの観光(Park Postojnska jama)
ポストイナ鍾乳洞を見学するにはガイドツアーに参加する必要があります.ツアー時間は公式ホームページで確認できます.
同じ敷地内にある博物館や洞窟城(ポストイナ鍾乳洞からは約10km離れている),洞窟城の地下洞窟とセットになったチケットも販売しています.チケット売り場に近づくと,おねぇサンが近づいてきてセット内容を説明してくれました.
《わん》「どれにする?」《ころ》「せっかくだから洞窟城も見てみようよ」とめずらしく(?)食べ物以外にも興味があるようだったので,ポストイナ鍾乳洞と洞窟城,洞窟城の地下洞窟のコンビチケットを購入しました.価格は39.50ユーロでした(2013年夏).学生割引などもあるようです.
チケットにはガイドツアーの出発時間が記載されています.おさんぽわんこが買ったチケットは『ポストイナ鍾乳洞が9:00,洞窟城の地下洞窟が13:00』となっています.この2ヵ所はガイドツアーでしか見学できません.ちゃんと指定された時間に集合しないと無効になってしまいます.
時間に余裕があるか確認してからチケットを買ってくださいね♪ なお,7・8月のシーズン中,コンビチケットを買った人はPostojna Cave-Predjama Castle(洞窟城)間の無料シャトルバスを利用できるそうです.
ポストイナ鍾乳洞のある場所には,レストランやお土産物屋さんもありました.
ツアーまでの空き時間を調節できますね”
ポストイナ鍾乳洞(Postojnska jama)
ポストイナ系鍾乳洞の地下道全体の長さは20.57kmです(ポストイナ鍾乳洞は11.235km).一般的なガイドツアーは5kmで,トロッコルート3.2kmと徒歩ルート1.8kmで構成されています.ガイドツアーは約90分です.結構歩くので運動靴がおススメです.
入口のある広場には,ヤムスキ・ドヴォレツという歴史的建造物があります.この建物はレストランでもあり郷土料理も楽しめるようです.
ツアー参加者が続々と集まっている様子が写っています.
建物の壁面に「IMMENSUM AD ANTRUM ADITUS」という文字が書かれているのが見えますか? これは「旅人よ無限の鍾乳洞へ」を意味するラテン語なのだとか.そう” この建物が鍾乳洞への入口となっているのです.
改札口のようなゲートを通過して,トロッコ電車のホームへ向かいます.写真のマネキンが着ているのは風よけのマントです(有料レンタル).鍾乳洞内は10℃前後に保たれています.従って夏は“涼しい”というか寒いくらいに感じます.
おさんぽわんこは撥水効果があり風を防げるような素材の上着を持って行きました.ナイロンやポリエステルといった素材は軽く,丸めてもシワにならないし,小さくたためるのでカバンの中に入れていても邪魔になりません”
トロッコに乗って出発です♪ 《わん》と《ころ》も仲良く乗って・・・ゴーゴー!
冷たい空気を感じながら,10万年以上の時をかけてできた地下の世界へ...
ゴォォーと音を立てながら,狭いトンネルを抜けたりホールのようなところを通過したり...トロッコに乗っているだけでも,いろいろ見ることができます.みんなハイテンションです.
鍾乳洞内のレールは1872年に敷かれました.といっても当時は手押し車だったそうです.1884年には照明設備が整えられていましたが,トロッコは1957年までガソリンで動かすタイプだったそうです.
トロッコの降車ホームの下には川が流れていてピウカ川といいます.ピウカ川はピウカ盆地を流れた後,鍾乳洞内へ流れ込みます.ポストイナ鍾乳洞は数億年もの歳月をかけたピウカ川の溶食と侵食によってつくられたものです.
場所によっては鍾乳洞内に『ファセット』という水流によって出来た波のような(スプーンのような)跡が残っています.ファセットとは壁に見られる10cmくらいのくぼみのことで,水流で石灰岩が溶かされたり削られたりすることで生じます.ピウカ川は,現在でも鍾乳洞の最下層を流れています.
トロッコを降りたらガイドさんに従って歩きます.ツアーは言語ごとにグループ分けされ行われます.残念ながら,日本語グループはありません”(オーディオガイドは日本語有り).《わん》と《ころ》は,とりあえず『ENGLISH』と書いてあるライトの前に集まりました.
鍾乳洞内はツアーを効率的に進めるため基本的に写真禁止です.でも,撮影をして良い場所もありガイドさんが指示してくれます.
炭酸カルシウムの層が地面や石を覆った姿を鍾乳石と呼びます.鍾乳石は何万年もかけて形成されます.
石灰岩のひび割れを地下水が通過し,滴り落ちた時に水分が蒸発し微量の炭酸カルシウム結晶が沈殿されるそうです.これが繰り返されることで,鍾乳石となっていくのです.鍾乳石が1mmできるには10年から30年の歳月が必要と言われています.ポストイナ鍾乳洞の地下水には1ℓあたり200mgの炭酸カルシウムが溶解しているそうです.このうちの半分位が鍾乳石として沈殿するのだとか.
鍾乳洞の中はとても広い空間です.鍾乳石が珊瑚礁のようにも見え,まるで海の中にいるみたいでした.
鍾乳石は洞窟の場所(高度や広さ)によって様々な姿を見せてくれます.色や形に変化があるのです.水に含まれる物質の種類・量によって色や濃さに変化が現れます.ポストイナ鍾乳洞には赤い鍾乳石で覆われている『赤ホール』という場所もあります.さらに『白ホール』という場所には,ポストイナ鍾乳洞内で最も白いと言われる鍾乳石を見ることができます.沈殿した炭酸カルシウム結晶の中に他の物質が含まれていないと白色になるそうです.
鍾乳石は形状によって呼び名があります.天井から下向きに形成される鍾乳石をスタラクタイト(つらら石)と呼び,地面から上向きに形成される鍾乳石をスタラグマイト(石筍)と呼びます.
また鍾乳石の形によってユニークな名前がついているものもあります.『スパゲッティホール』と名付けられた場所では天井から垂れ下がる無数の細長い鍾乳石を見ることができます.
洞窟内の鍾乳石はライトの演出・効果でより神秘的に見えました.キラキラしている鍾乳石もありました.
ツアールートは橋が渡されているところもあり,いろんな角度から鍾乳石を見ることができます.見る方向や光の具合によっては動物や植物の形に見える鍾乳石もあります.ガイドさんが説明してくれます.
『ブリリアント』と呼ばれる石筍とその隣にある石柱はポストイナ鍾乳洞のシンボルなのだとか.名前の通り,ポストイナ鍾乳洞内で最も美しい石筍だと言われています.
雪のように白いブリリアントはツルツルしていそうでした.高さは約5mです.美しさに圧倒されてしまいますが,この場所は背景にも素晴らしい鍾乳石を見ることができるポイントです.カーテン上の鍾乳石や細いつらら状の鍾乳石がありポストイナ鍾乳洞内でも絶景のポイントとされています.
鍾乳洞内でひときわ明るく光っているのは,お土産屋さんです.ガイド案内終了地点『コンサートホール』にありました.
コンサートホールは鍾乳洞内最大級の空間で面積が3000㎡もあります年に数回コンサートが開催されるそうです.
今回の記事はこのお土産屋さんで購入した「ポストイナ鍾乳洞ガイドブック」を参考にしています.日本語版もありました.詳しい解説もあり,とっても参考になる本です.
お買い物タイムの後は,トロッコ電車に乗って出口へ向かいます.
ヴィヴァリウム(Vivarium Proteus)
ヴィヴァリウムは鍾乳洞内に作られた博物館のような場所です.薄暗い鍾乳洞内には展示ケースが並べられ,洞窟内にいる生物や鍾乳洞の構造が紹介されています.
公式ホームページの英語版では“Tour timetable”となっていますが,係りの人が案内するガイドツアーではありません.利用可能時間内なら常に見学可能です.
ポストイナ鍾乳洞には,一時的または周期的に洞窟内で過ごすものも加えると130種類もの動物がいるそうです.その中でも,最も注目されている生物といえば「プロテウス」です.この博物館の名前にもなっています.
【プロテウス・アンギヌス】
ヨーロッパ唯一の鍾乳洞脊椎動物であるプロテウスは,スロベニアのカルストのシンボルでもあります.
薄いピンク色をした表皮の色から“人類魚(human fish)”という名でも知られています.ヴィヴァリウムには水槽があり,生きているプロテウスを見ることができます.絶滅危惧種として厳格な保護のもとに置かれている貴重な生物です.
プロテウスは地下水脈や地底湖に生息しており,目の機能は発達していません.小さな足があり,前足・後ろ足が離れていることが特徴です.
模型のプロテウスと記念撮影♪
薄いヒレがあるので上手に泳ぐことができるそうです.プロテウスに関する最初の記録は1768年にまで遡ることができます.「ドラゴンの子」と信じられていた時代もあったそうです.
鍾乳洞に住む動物としては世界最大で,30cm程まで成長します.100年以上生きるものもいるそうです.長生きすることも驚きですが,数年間は食べ物がなくても生き続けることができるということにも驚きました.
つぎはどこをお散歩しようかなぁ...
【今回の観光地】
Postojnska jama(Postojna Cave)
Jamska cesta 30, 6230 Postojna
季節によって営業時間が異なります.ネットでチケットを事前購入すると割引があるようです♪
公式URL
http://www.postojnska-jama.eu/en/
【ポストイナ鍾乳洞へのアクセス】
リュブリャナから自動車で約50分. 高速道路A1(またはE70)を南西方向へ.出口Postojnaで降ります.有名な観光地ですので高速道路や一般道路にちゃんと標識が出ています.
なお,スロベニアの高速道路を走る場合はビグネット(またはVinjeta:ヴィニエッタ)が必要です.在スロベニア日本大使館によると,ビグネットの料金は1週間有効:15ユーロ,1ヶ月間有効:30ユーロ,1年間有効:110ユーロです.スロベニア国内や隣国との国境付近にあるガソリンスタンドでも購入できます.
スロベニアでの運転は,昼間でもライト点灯,全席シートベルト着用なのでレンタカーを運転する際は注意してください.
ポストイナへはバスや電車を利用するとリュブリャナから1時間程度です.しかし,ポストイナの町にあるバスターミナルや駅が「ポストイナ鍾乳洞」と離れていたり,土日は減便されたりします.バスや電車の情報はポストイナ鍾乳洞の公式ホームページ「Getting to Postojna」から確認できるようです.
スロベニア
イタリアの東側に位置するスロベニアは,オーストリア,ハンガリー,クロアチア,イタリアと国境を接しており,アドリア海に面する海岸線も有しています.
1991年に旧ユーゴスラビアから独立し,2004年にEU加盟を果たしました.2007年からユーロが使えるようになりました.
国名 | Republic of Slovenia(スロベニア共和国) | |
人口 | 207.6万人(岐阜県と同じくらい) | |
面積 | 2万273平方キロメートル(岐阜県の2倍くらい) | |
言語 | スロベニア語 | |
通貨 | ユーロ(2007年に導入) | |
時間 | UTC+1(日本時間 -8時間,夏季は -7時間) |
「ガイドスロベニア」(ISBN 978-961-6414-58-6)
「ポストイナ鍾乳洞ガイドブック」(ISBN 978-961-6466-36-3)
二宮書店編集部(2015)「データブック オブ・ザ・ワールド 2015年版」二宮書店.
外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html
Eurostat:http://epp.eurostat.ec.europa.eu/portal/page/portal/eurostat/home/
I FEEL SLOVENIA:http://www.slovenia.info/