エストニア 「タルトゥ大学」の思ひで… 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain 【訪問日:2015年9月】

 
市内観光の時間です.
今日はエストニアの「タルトゥ(Tartu)」でお散歩です.

 

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今日は,タルトゥ大学(University of Tartu)に関係する施設をお散歩しました.

スウェーデンのグスタフ2世アドルフ王(Gustavus Adolphus II)がタルトゥ大学を創設したのは1632年のこと.創設者の名前に因み「アカデミア・グスタヴィアーナ」という名の大学でした.現在のタルトゥ大学の前身です.
大学本館の裏手には創設者の銅像が立っています. 

 

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18世紀に起こったロシアとの戦争に伴い大学は約100年の間閉鎖されたそうです.再開後,タルトゥの町は学問の中心地となり,天文台や植物園などが設置されていきました.1805年頃には解剖学研究所が完成し数多くの医学者がここで働いていたのだとか.

今日,タルトゥでは1万7000人もの学生が学んでいます. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain タルトゥ大学本館 

 

1809年に完成した大学本館(The University of Tartu Main Building)はクラシック様式の立派な建物.デザインしたのはタルトゥ大学の建築学の教授Johann Wilhelm Krauseです.写真は建物の正面ではなく,中庭に面した部分です. 

 

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住所:Ülikooli 18, Tartu
営業時間:
(5月から9月)月曜から土曜の10:00-18:00
(10月から4月)月曜から金曜の11:00-17:00
URL:http://www.kunstimuuseum.ut.ee/en

 

【combined ticket】
共通券,大人7ユーロを購入しました(2016年夏には8ユーロとなっています).
旧天文台(Tartu tähetorn)とタルトゥ大学美術館(Tartu Ülikooli kunstimuuseum)とタルトゥ大学博物館(Tartu Ülikooli muuseum)の3つのミュージアムに入場できます.

 

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タルトゥ大学美術館ではタルトゥ大学の缶バッチをプレゼントしてくれました♪

 

【Tartu Ülikooli kunstimuuseum(タルトゥ大学美術館)】

大学本館の1階南棟(left wing)内にあるのがタルトゥ大学美術館(University of Tartu Art Museum)です.
大学の式典などが行われるThe Assembly Hallや屋根裏にあるlock-up room(規則に違反した学生を拘留する部屋)を見ることができるそうですが,2015年にお散歩した時は工事中.見学できるのは美術館の常設展示だけでした.

《ころ》「工事中で,あまり見られないから缶バッチをくれたのかなぁ!?」
展示されているのは主に彫像です. 

 

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ギリシャ,ローマ時代の彫刻,陶器,原寸大の石膏像といったレプリカが展示されています.エストニアで唯一,古美術の展示を行っている美術館なのだそうです.学生のための施設でもあります.エジプトのミイラやコインなどオリジナル品も展示されています.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Tartu tähetorn(タルトゥ大学旧天文台)

 

1810年に完成したタルトゥ大学旧天文台(Old Observatory)は,当時の最高級の設備,技術が取り入れられていました. 

 

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Tartu tähetorn
住所:Lossi 40, Tartu
営業時間:
(5月から9月)火曜から日曜の10:00-18:00
(10月から4月)水曜から日曜の11:00-17:00
URL::http://www.tahetorn.ut.ee/en

 

1964年まで観測施設として活躍した天文台は,2011年からミュージアムとして天文愛好家に親しまれています.
階段を上ると「Zeiss Refractor」があります.

 

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展望スペースもあるのですが...木が生い茂っていました. 

 

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1階の展示室には年代物の望遠鏡や地球儀が展示されています.古い地球儀,Arabic celestial globeは14世紀のものです.

 

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隕石も展示されています.《わん》「持ち上げてごらん」
《ころ》「このくらいの大きさなら」と言い片手で持とうとしたら...「あれ⁉ 重たくて片手で持ち上げられないよぉ”」

1824年に導入された屈折望遠鏡も残っています. 

 

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9-inch Fraunhofer Refractorは1824年当時最も大きく性能の高い屈折望遠鏡だったそうです.
タッチスクリーンでの展示や壁全体に星が映し出される仕掛けもありました.

この建物は地下にも部屋があります.

 

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地震を記録する機械が置かれていました.またパソコンの画面にはリアルタイム(⁉)での世界の地震発生を検索できるようでした.
旧天文台は測地学や地震学における研究の拠点でもあったのです.

「シュトルーヴェの測地弧(Struve Geodetic Arc)」は
ドイツ人天文学者シュトルーヴェがこの天文台の主任を務めていたころにアイデアを練ったもので,この場所が最初の測量点となったそうです.
彼はノルウェーの北極海からバルト海にかけての経線のカーブの長さを計測しました.

 

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地球の正確な大きさと形を1816年から1852年の計測により明らかになりました.シュトルーヴェに関する資料や観測具も展示されています. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Cathedral ruins(大聖堂)

 

タルトゥ大聖堂の建設は13世紀末に開始され,完成したのは2世紀後だったと考えられます. 

 

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トーメの丘にある印象的な廃墟.ゴシック様式を取り入れたレンガ造りの教会でした.リヴォニア戦争(Livonian War)で甚大な被害を受け,1624年には火災にも遭っています.
旧大聖堂の塔に上ることができ,展望スペースとなっています.

 

【Tartu Dome Cathedral Towers】
営業時間:
火曜から日曜の10:00-18:00,冬は閉鎖されているようです.

ミュージアムの共通券で入場できました(University of Tartu Museumの入場料金に塔の料金も含まれているようです).
約108段上ります.木製の部分もあり,怖かったです.

 

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階段を上る途中ではテニスコートも見えました.大学の施設かな⁉
展望スペースからは 

 

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旧大聖堂を上から眺めることができます.

帰り道,下りる階段を間違えると...大変です.

 

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一生懸命,下りたのに,そこには「No exit」と書かれた扉が.罠です.下まで行かないと分かりません.疲れているのに,正しい出口へ向かうためにもう一度階段を上って,下りなくてはなりません.


【Tartu Ülikooli muuseum(タルトゥ大学博物館)】
大聖堂の一部は19世紀初頭に再建され,現在は歴史博物館となっています.

 

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Tartu Ülikooli muuseum
住所:Lossi 25, Tartu
営業時間:
(5月から9月)火曜から日曜の10:00-18:00
(10月から4月)水曜から日曜の11:00-17:00
URL:http://www.muuseum.ut.ee/en

 

共通チケットで入りました.

タルトゥ大学博物館(University of Tartu Museum)ではタルトゥ大学の歴史,研究の成果が展示されています.
大学の歴史や研究の成果を紹介するフロアです.

 

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写真は,乳酸菌酵母「lactobacillus fermentum ME-3」を発見した学者です.他にもいろんな研究成果が紹介されていました.

学びながら科学を理解できる展示もあります.

 

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ココナッツやアップル,ジンジャーなどの香りを当てる展示もありました.
《ころ》「...難しい.」ほとんど外れました.

大学で使われてきた品々も展示されています.中にはこんなものも.

 

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カンニングペーパー(cheat sheets)です.偉そうに展示されていました.くるくる巻いてあるのは1980年代のもの,本のようになっているのは2000年代のものだそうです.
《わん》「細かい文字で,いっぱいに書かれてるね!」

タルトゥ大学博物館は3フロアくらいあり,それぞれの展示室でガラッと展示の雰囲気が変わります.
係りのおねぇさんが付いてきてくれて,必要なところで解説をしてくれます.最初から最後まで,全部説明するのではなく,必要そうなところだったり,こちらが聞きたいことがあったりすると応えてくれるので,時間がかかりすぎずちょうど良い感じでした.でも,ずっと付いてきてくれるので...なんだかちょっと落ち着きませんでしたが.

建物自体も美しいと評判で,立派なホールもありました.

 

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また,タルトゥで一番古いというエレベーターに乗ることができます.

 

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《ころ》「テレビの海外ドラマで出てくるようなエレベーターだ♪」
このエレベーターは90年前のものなのだそうです.

2016年5月1日にリニューアルオープンしたので,展示内容が大きく変わっているかもしれません” 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Toomemägi(トーメの丘)

 

廃墟となった大聖堂の隣に広がる丘がトーメの丘(Toome Hill)です. 

 

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緑が多くのんびり過ごせる場所でもあります.
この丘は皇帝ポール1世(Emperor Paul I)からの大学への贈り物なのだそうです.エストニアの詩人(Kristjan Jaak Peterson)やエストニア国民運動のリーダー的存在だった人(Villem Reiman)(やタルトゥ大学図書館を最初に創設した教授(Johann Karl Simon Morgenstern))などのモニュメントがあります.

 

トーメの丘の近くには「天使の橋」と「悪魔の橋」と呼ばれる橋があります.
Lossi tänavにあるのは「天使の橋」.

 

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1838年に作られた橋です.Tartu Inglisildとも言われています.エストニア語でinglise sild(English bridge)と表現することに名前の由来があると考えられています.
欄干に描かれているのはタルトゥ大学が再開した1802年当時の大学の牧師G.F.Parrotです.

Lossi tänav 19にあるのは「悪魔の橋」.

 

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1913年にロマノフ王朝300周年を記念して作られました.
《ころ》「天使の橋より新しいのに,黒ずんでて古く見えるねぇ.」

天使の橋に対して悪魔の橋と言われるようになったとも言われていますし,建設エンジニアであるWerner Zoege von Manteuffelが‟teufel”(ドイツ語でdevilを意味する)という名前だったことに由来していると言われています. 

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain Tartu Ülikooli botaanikaaed(タルトゥ大学植物園)

 

タルトゥ大学植物園(University of Tartu Botanical Garden)は1803年に設立されました.1810年の時点で4360種類もの植物があったそうです.

 

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住所:Lai 38, Tartu
営業時間:温室10:00-17:0,ガーデン7:00-19:00(夏は21時まで)
URL:http://www.botaanikaaed.ut.ee/en


入場料金は3ユーロでした.温室(Greenhouses)と植物園(外のガーデン)があります.外のガーデン部分は無料で見学できます.

植物園には世界中から集めた6500種もの植物があります(1万種とも言われています).

 

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温室は2階部分にも上ることができます.ヤシやツル植物,サボテンや多肉植物もありました.

温室内はグリーンな感じでしたが,ガーデンの方は花も咲いていてカラフルでした.

 

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今回は入口付近しかお散歩しませんでしたが,ガーデン部分は広く,「エストニアの植物」「北アメリカの植物」「ハーブ園」など様々なテーマに沿って庭作りが行われているようです.
子供が遊べるプレイグラウンドやちょっと大きな池もあります.

 

つぎはどこをお散歩しようかなぁ... 

 


 

【タルトゥへのアクセス】
エストニアの首都タリンとは,190㎞くらい離れています.車で行くと2時間くらいかかります.ラトビアの首都リーガとは260㎞ほど離れています.
タルトゥ市内の駐車場についてはhttp://www.visittartu.com/en/parking/をご参照ください.

タルトゥには空港もあります.
フィンランドの首都ヘルシンキとの間は航空便もあり(Finnair)毎日,運航便があるようです.所要時間は50分程度とのことです.

 

(エストニアでの運転)
速度制限 市街地:50km/h,郊外:90km/h(夏期は110km/hとなる場所もあります)です.ヘッドライトは常に点灯させる必要があります.高速道路は無料です.高速道路や主要道路には取り締まりのカメラがたくさんあります.スピードに注意して運転してください.

 

f:id:osanpowanko:20140227173908p:plain エストニア

 

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バルト三国の最も北に位置する国で,ラトビア,ロシアとは陸続きで国境を接しています.バルト海を挟んで北側にはフィンランドがあり,ヘルシンキとタリンの間ではフェリーも運行されています.言語や文化はフィンランドなどの北欧とよく似ていると言われており,バルト三国でエストニアだけが異なる言語グループに属しています.
2011年にバルト三国で最初にユーロを導入しました.EUへは2004年に加盟しています.
IT立国化が推進されているエストニアでは国政選挙もネット上で行うことができ,ITを通じた効率化が進められています.マイナンバーのICカードも普及しており,行政や納税の時だけでなく銀行のオンラインログインなどにも利用されています.インターネット電話サービスのSkype(スカイプ)がエストニアで開発されたことも有名です.ITイノベーション産業の誘致・育成が積極的に行われており,日本との間ではIT・サイバー分野での協力が行われています.

 

国名 Republic of Estonia(エストニア共和国)

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人口 131万人
面積 約4.5万平方キロメートル
言語 エストニア語
通貨 ユーロ(2011年に導入)
時間 UTC+2(日本時間 -7時間,夏季は -6時間)

 

【参考ホームページ・参照文献】

二宮書店編集部(2016)「データブック オブ・ザ・ワールド 2016年版」二宮書店. 

外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html

エストニア エストニアの古き町並みと田園,ISBN 978-9985-9969-04.

Visit Estonia:http://www.visitestonia.com/en/